FANUCの数値制御装置をベースにNCシステムについて解説してみます。NC装置の取説はあまりにも膨大で、各要素ごとのおおよその概要すらなかなか把握することすら難しいと思います。そこで多少大雑把ではありますが、NCシステムについてまとめてみました。
数値制御装置とは
数値制御装置とはnumerical controlの頭文字を取ってNC装置とも呼ばれます。
NCは NC言語にて記述された加工プログラムから、旋盤やマシニングセンターのなどの工作機械の送り軸の動作を制御します。NC工作機械の各軸を実際に駆動させるのがサーボモーターとアンプです。これらの駆動系を総称してサーボドライブシステムと呼ばれます。
NCとサーボシステムは専用の高速バス通信で接続され位置情報などをやり取りします。FSSB( FANUC Serial Servo Bus)と呼ばれる光通信を使用します。
これらの「サーボシステム」と「NC装置」をまとめて、NCシステムと呼ばれる事もあります。
NC装置の内部構成
NCの中身を、
- 数値演算部
- シーケンス制御部
- サーボ制御部
- 画面表示部
に分けて説明します。
NCの数値演算部
数値演算部 はNCプログラム(加工プログラム)を解析し、各軸を制御するサーボアンプへの移動指令を作成します。
この時の移動指令は工具の補正量やボールねじのピッチ誤差、バックラッシュなどを考慮した補正が加えられます。この時の工具補正量はNCプログラム中のTコードやHコードによって指定します。ピッチ誤差やバックラッシュはNCパラメータにてあらかじめ設定されています。
シーケンス制御部
FANUC社のNCに内蔵されたシーケンス制御部はPMCと呼ばれます。
FANUC PMCと汎用的なPLCとの違いは、PMCがNC装置内部に組み込まれているため、NCとの内部的なデータのやり取りのデータを高速転送できる点です。NC内部の状態信号はPMCのFアドレス領域に書き込まれ、PMCはGアドレス領域にデータを書き込む事でNCに対し様々な要求を行います。
例えばNCの演算部はシーケンス制御部からの要求があって初めて加工プログラムの起動を行います。運転後終了後(M30指令後)にNCはシーケンス制御部からの要求に従い、シングルブロックやフィードホールドなどの運転停止処理を行います。またNCは加工プログラムを終了した事をシーケンス制御部に通知します。シーケンス部はこれを受けて積層表示灯の点灯処理などを行います。
また加工プログラム中にMコードやTコードが指令された場合もNC演算部はシーケンス制御部に対し、ストローブ信号を送ります。
このような仕様は機械ごとに若干仕様が異なるため機械ごとにプログラミングを行う必要があります。このときのプログラミングは汎用PLCと同様にラダー言語にて記述される場合が多いです。
サーボドライブシステム
サーボドライブシステムは
- サーボモータ&エンコーダ
- サーボアンプ&パワーサプライ
- サーボ演算部
に分けられます。
サーボモータとエンコーダ
ボールネジを駆動するサーボモータとしては永久磁石を使用した同期モーターが使用されます。サーボモータのサイズはおおよそ出力が規格化されています。ブレーキ付きのサーボモータも存在します。ブレーキ解除処理はシーケンス制御部が担当します。
サーボモーターの速度と位置をサーボ制御部へフィードバックするためにエンコーダが使用されます。エンコーダはパルスコーダとも呼ばれます。
サーボアンプ
サーボアンプはサーボモータに流す電流とその周波数をコントロールモジュールです。サーボ制御部はサーボモータに流したい電流と実際に流れる電流を検出し、フィードバック制御を行います。
パワーサプライモジュールはAC電圧をDC電圧に変換しサーボアンプに供給します。サーボアンプはスイッチングデバイスを使用したPWM制御によりサーボモータに任意の周波数のAC電圧をモータに供給し、駆動させます。
サーボ演算部
演算部では、サーボの電流制御、速度制御、位置制御を行い、サーボドライブシステム全体を統括します。NCの演算部から受け取った軸移動指令値の通りに、送り軸を動かすために、サーボアンプを制御します。
この時、NC演算部からの指令座標値と、エンコーダにて検出した座標値の差を位置偏差と呼びます。サーボ演算部はこの位置偏差値量がゼロになるようにサーボモータを動作させる仕組みになります。
画面表示部
画面や操作スイッチを総称してHMI( human machine interface )と呼びます。
非常停止ボタンやクーラントなどの周辺装置の起動用のスイッチはシーケンス制御部が担当します。画面制御やプログラム入力用のキーボードをMDI( Manual Data Input )キーと呼びます。
画面の中の例として、工具情報や補正量を管理するための画面や、パラメータを設定するための画面が用意されています。
まとめ
ごく簡単ではありますが、まとめてみました。
以上です。
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