三菱電機製シーケンサMELSEC-QシリーズCPUの特徴に、「入出力ユニット」や「インテリジェント機能ユニット」といったオプションユニットをCPUベースユニットに後付し、機能を拡張することが出来るという点があります。
ただし、これらのオプションユニットを使用する際には、「先頭入出力番号(先頭X/Y)」、「ユニット番号」、「入出力占有点数 」といった独特の考え方を理解しておく必要があります。
Qシリーズにオプションユニットを使用する際は、エンジニアリングソフトGX Works2の「CPUのパラメータ設定」にて 入出力番号の割付けやユニット型式名の記入をしてほいたほうが良いと思います。単純にこれらオプションユニットをPLCの空きスロットにポン付けすることはおススメできません。
入出力番号の割付けとは
入出力番号の割付とは、CPU内部で使用されるX/Yデバイスの入出力と入出力ユニットの端子台に接続された信号線の入出力を対応させるような作業です。
割付アドレス自体は自動的に決まるため特に難しいことはありません。
ただし、割付のルール自体を知っていないと、拡張ユニットを正しく使用することはできません。
例えば、「 I/O入出力ユニット」に接続する信号線が、CPU内部ではどのX/Yのアドレス番号に割り当てられるのかを求めるためにも入出力番号を把握しておく必要があります。さもなくば、電気回路図作成時などに苦労することになります。
慣れてしまえばどうということもないのですが、慣れないうちは複数のマニュアルを横断して調査を行わなければならず大変な作業になると思います。恐らくは以下のマニュアルを参照することになると思われます。
- エンジニアリングソフト(GX Works2やGX Developer)のユーザマニュアル
- CPUユニット自体のユーザマニュアル(機能解説編)
- 入出力ユニットやインテリジェント機能ユニットのユーザマニュアル
そこで、どれも数百ページ越えのボリュームがあるため、該当箇所を探すことは大変だと思います。そこで、今回具体的な例を挙げて、入出力の割付について説明したいと思います。
本記事での説明はできるだけ、原本となるカタログや参照すべきユーザマニュアルの参照先を併記するように心がけますので、必要に応じてユーザマニュアルの方も参照してみてください。
入出力ユニットの信号とCPU内部の入出力デバイスの関連付け
入出力ユニットQX40の場合、「端子台番号」と「信号名」は1対1で対応しています。信号名はX00からX0Aまで連続しており、合計点数は16点です。ただし、信号名は16進数で表記されています。なお、入出力アドレスの進数はPLCメーカやシリーズによって異なります。三菱MELSEC-Qシリーズの場合たまたま16進数が採用されているだけです。
入力ユニットの端子「TB1」に配線された信号線の信号名は「X00」となっています。しかしこのTB1の信号が、必ずしもこのままCPU内の入力用デバイス「X00」になるとは限りません。もしそうだとすると、同一のCPUに対しQX40を2つ以上実装した場合、入力デバイス「X00」のアドレスがCPU内で重複して使用されることになってしまうことになりかねません。
実際のところ、 CPUは入出力ユニットがベースユニットのどの位置のスロットに実装されているのかを認識し区別することで、同じ信号名のユニットが複数使用されたとしても、入力デバイスの重複使用を回避するようになっています。
例えば以下のような構成の場合、入出力ユニットの実装されるスロット番号によって、先頭X/Yアドレス(入出力番号)が決まり、それぞれの信号が先頭X/Yアドレスだけオフセットされた位置へ割り付けられます。スロット番号0のユニットの入出力占有点数を考慮して、1スロット目の先頭X/Yが決まります。
また、先頭X/Yアドレス(0000,0010,0020,0030)は16進数表記、入出力占有点数(16点)は10進表記となっています。1スロット目の先頭X/Yが0010であれば丁度「0000」から16点分だけ先頭アドレスをずらした領域から、2スロット目の信号を割り付けるという意味になります。
16進数表記 X/Y先頭アドレス | 10進数換算 |
0000 | 0000 |
0010 | 0016 |
0020 | 0032 |
0030 | 0048 |
具体的に、各入出力ユニット内端子台の1点目に配線される信号線は、PLC内で、以下のアドレスに割り付けられます。
実装先 | 型式 | 配線端子台 | 信号名 | CPU内 入力デバイス割付結果 (16進数表記) |
0スロット目 | QX40 | TB1 | X00 | X0000 |
1スロット目 | QY40P | TB1 | X00 | X0010 |
2スロット目 | QY40P | TB1 | Y00 | Y0020 |
3スロット目 | QY40P | TB1 | Y00 | Y0030 |
また、三菱電機製のQシリーズの場合の注意点がいくつかあります。
- 0スロット目の入力ユニットは信号名(X00等)は16点分そのまま、CPU内の入力デバイスとなる
- 1スロット目の入力ユニットは0スロット目に続いて、17点目からX/Y領域を占有する。
- 2スロット目に出力ユニット(QY40P)が実装されたときは、出力用YデバイスはY0020から割付が始まります。0,1スロット目の入力ユニットで使用された0000-001Fの16*2=32点分のYアドレスは未使用となります
入出力占有点数
入出力占有点数とは、拡張ユニットをベースユニットに実装したときに、CPU内のX/Yアドレス領域を占有する信号の点数です。入出力ユニットであれば、基本的にそのユニットがもっている入出力信号の数だけそのままX/Yアドレス領域を占有します。インテリジェント機能ユニットであれば、ユニットごとに決められた点数を占有します。
入出力ユニットの 入出力占有点数
I/O入出力ユニットの入出力占有点数については、MELSEC-Qシリーズのビルディングブロック入出力ユニットユーザーズマニュアルを参照願います。各ユニットごとの部品仕様表に入出力占有点数の記載があります。
ほとんどの場合は、合計点数がそのまま入出力占有点数となります。
種類 | 型式 | 入出力占有点数 |
16点ユニット | QX40 QY40P | 16点 |
32点ユニット | QX41 QY41P | 32点 |
64点ユニット | QX42 QY42P | 64点 |
インテリジェント機能ユニットの 入出力占有点数
単純なI/O入出力以外の機能を持つ拡張ユニットをインテリジェント機能ユニットと呼びます。また、単に「インテリ」ユニットと呼ぶ場合もあります。代表的なインテリユニットの占有点数は以下の通りです。
用途 | 型式 | 入出力占有点数 |
CC-LINKマスタユニット | QJ61BT11N | 32点 |
アナログ-ディジタル変換ユニット | Q64ADH | 16点 |
シンプルモーションユニット | QD77MS2 QD77MS4 | 32点 |
Ethernetインタフェースユニット | QJ71E71-100 | 32点 |
入出力占有点数 については、各ユニット専用のユーザーズマニュアル内の部品仕様に関する章の中に記載があります。
インテリジェント機能ユニットの入出力信号の用途は、入出力ユニットとは異なります。
入出力ユニットは自身の端子に割り付けられた入出力信号をCPUに伝えるのに対し、インテリユニットでは自信の運転状況や異常の有り無し等を伝えます。
設定例
入出力ユニットとインテリジェント機能ユニットを両方使用する場合のI/O割付とパラメータ設定について説明します。
No | スロット | 種別 | 形名 | 入出力占有点数 | 先頭X/Y |
0 | CPU | CPU | Q03UDVCPU | – | – |
1 | 0 | インテリ | QJ61BT11N | 32点 | 0000 |
2 | 1 | 入力 | QX42 | 64点 | 0020 |
3 | 2 | 出力 | QY42P | 64点 | 0060 |
4 | 3 | インテリ | Q64ADH | 16点 | 00A0 |
5 | 4 | インテリ | QD77MS2 | 32点 | 00B0 |
6 | 5 | 空き | 空き | 空き | 空き |
7 | 6 | 空き | 空き | 空き | 空き |
8 | 7 | 空き | 空き | 空き | 空き |
ポイントとして、
- 入力ユニット(QX42)は入力デバイス(X**)しか使用せず、 占有したXデバイスと同一アドレスの出力デバイス領域は使用不可となる。
- 出力ユニット(QY42P)は出力デバイス(Y**)しか使用せず、 占有したYデバイスと同一アドレスの入力デバイス領域は使用不可となる。
- インテリユニットはX/Y領域を共に、入出力占有点数分だけ使用する。
GX WorKs2の設定
メニューバー →「表示」→「ドッキングウィンドウ」→「ナビゲーション」より、ナビゲーションウィンドウを表示させる。
「パラメータ」→「PCパラメータ」を選択します。
Qパラメータ設定→I/O割付設定にて割付を行います。
設定項目は以下の通り
- 1設定項目
ベースユニットにはスロット番号(0,1,2,…)が割り振られています。
ベースユニットのCPUユニットの次のユニットはスロット番号が0です。 - 2種別
ベースユニットのスロットに取り付けた拡張ユニットの種類を選択します。
空き、入力、高速入力、出力、入出力混合、インテリ、割り込みの中から選択します。 - 3形名
り付けられているユニットの型式をメモすることが出来ます。
記入しておいた方がわかりやすく、親切であるため、できる限り記入しましょう。 - 4点数
装着ユニットの 入出力占有点数 を記入します。
- 5先頭XY
各スロットの入出力番号を変更する場合は,変更後の先頭入出力番号を設定します。
通常は変更せず、連番で使用する事の方が多いと思います。
割付確認
Qパラメータ設定右下のX/Y割付確認から、割付状態を確認することができるようになっています。
まとめ
- MELSEC-QにてI/O割付を行う際の拡張ユニットの種類に注意する。
- ユニットによって 「入出力占有点数 」が異なる。
- 入出力ユニットとインテリユニットでは、X/Y領域への信号割り付け方が異なるため注意が必要
以上です。
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