プラスコモンとマイナスコモンの違い
三菱電機製シーケンサMELSEC-Qシリーズの入力ユニットには”プラスコモンタイプ”と”マイナスコモンタイプ”の2種類がラインナップされています。
PLCの入力ユニットの選定を選定する際、プラスコモンタイプ”と”マイナスコモンタイプ”の違い理解しておく必要があります。どちらを選定すればよいのかを解説したいと思います。
Qシリーズ以外の三菱製シーケンサ( MELSEC-iQ-R やMELSEC-F)、KEYENCE製KVシリーズには、プラスコモンとマイナスコモンの切替が可能なタイプの入力ユニットの方が多いかもしれませんが、正しく配線できないとセンサーがONしても、シーケンサーに反応がないといったトラブルになります。
今回は、入力ユニットの配線タイプの考え方と選定のポイントついて解説します。
キーワードは以下の通りです。
これらの考え方は非常に奥が深くややこしいとおもいますので、先に結論をまとめておきます
MELSEC-Qシリーズ のI/O入出力ユニットは以下のようにまとめております。参考にしてみてください。
センサーの信号出力仕様
PLCへの入力となる機器の代表例がセンサーです。
センサー動作時、センサー側はPLCへI/O出力信号を送ります。一方、PLC側はセンサーの出力をI/O入力信号として受け取ります。センサーの出力信号は、PLCにとっては入力信号となります。
PLCの入力ユニット側は、このセンサーの出力した信号を受け取るわけですから、センサーの出力信号の種類に応じて、入力ユニット側の仕様を考慮する必要があります。
PLCの観点からは、センサーは信号を出力する制御出力機器となります。
センサーの出力仕様には概ね以下のものがあります。
- 直流2線式出力
- 直流3線式NPNトランジスタオープン出力(ソース出力)
- 直流3線式PNPトランジスタオープン出力(シンク出力)
- 無電圧接点出力(ドライ接点)
特に 直流3線式NPNトランジスタオープン出力と直流3線式PNPトランジスタオープン出力についてはソース/シンクという考え方があるため、注意が必要です。
ソースロジックとシンクロジック
PLCなどのデジタル機器のインターフェースに、ソースロジックとシンクロジックという2つの考え方があります。
ちなみに、無電圧接点出力のセンサーは、ソース・シンクどちらにでも対応可能です。
デジタルI/Oのインターフェース仕様
センサーの出力端子とデジタルI/O機器の入力端子同士を接続する際、端子間に電流が流れていれば「ON」、反対に流れていなければ「OFF」となります。
この時、直流電流が流れる向きとしては、2以下の2パターンが考えられます。
- 入力側(シーケンサ側)→出力側(センサー側) に電流が流れる。
- 出力側(センサー側)→入力側(シーケンサ側) に電流が流れる。
どちらの向きに流すべきかを、考える必要があります。
しかし実際のところは、どちらでもよいのです。
どちらの向きに電流が流れようがかまいませんが、とにかく「流れている」のであればセンサー自身が反応したことを伝えることができます。ですので、とにかくうまく電流が流れるように、入力側と出力側の相性だけは適合させなければなりません。
そこで登場したのが、デジタルI/O機器同士を接続した際、動作時の直流電流の方向を区別するための考え方 シンク(Sink) とソース(source)です。
シンク(Sink) は「沈む」や「流し台」という意味です。「流出先」や「受け手」というイメージで覚えるとよいと思います。
一方で、 ソース(source) とは「源」「水源」「供給源」を意味し、電流が出てくるとイメージすると覚えやすいです。情報の出所の事をソースということがあります。
日本国内で一般的に使用されるシンクタイプ(電流を引き込む動作をするタイプ)のセンサーは、電流が流れ出ることによって動作する(ソース動作する)入力ユニットを組み合わせと、電流方向が一致します。
なお、PLC側がプラス24V側が共通端子になります。日本最大手のシーケンサーメーカーは、ソース動作する入力ユニットのことをプラスコモンと呼んでいます。
なお、欧州にて一般的に使用されるソースタイプ(電流を流れ出させる動作をするタイプ)のセンサーは、電流を引き込むことによって動作する(シンク動作)入力ユニットを組み合わせと、電流方向が一致します。
制御出力機器(センサー)を基準に考えた場合、シンク出力をシンクロジック、ソース出力をソースロジックと呼ぶことがあります。
ソース・シンク
ソース・シンクの考え方は、出力側を基準に考えるか、入力側を基準に考えるのかで呼び方が変わったりするので、非常にややこしいです。
上記については、
(ソースロジックとして、ソース出力動作するセンサーに対応し、)シンク入力動作する入力ユニットがマイナスコモンの入力です。
(シンクロジックにてシンク出力動作するセンサーに対応し、)ソース入力動作する入力ユニットがプラスコモンユニットです。プラスコモンは一般に日本国内で使われています。
と解釈すればつじつまが合います。
次に、以下の図は富士電機製のSPHシリーズPLCのハードウェアマニュアルから抜粋した図になります。
この図は、シンク動作するセンサーに対応しソース動作するシンクロジックの図です。
日本国内向けに多いタイプです・
図中の入力ユニットのコモンがプラス(+)になっているため、プラスコモンです。
出力機器(センサー)基準からするとシンク入力ですが、富士電機では、これを入力機器基準で”ソース入力”と呼ぶようです。一方、三菱電機ではこれを出力機器基準に”シンク入力”と呼んでいます。
呼び方は違えど、配線方法は同じですので、とにかく言葉に惑わされないように注意が必要です。
センサーのNPN、NPNの実例
説明のための具体例として、広く流通している光電センサーの配線接続を例に考えます。ここではオムロン製小型アンプ内蔵形光電センサE3Zシリーズの内部回路を使用して説明します。
この光電センサーの具体的な型式の例としては以下のようになります。
- E3Z-T66→ NPN 出力タイプ(シンク出力)
- E3Z-T86→ PNP 出力タイプ(ソース出力)
このようにトランジスタ出力するセンサーにはソース(PNP出力)タイプとシンク(NPN出力)タイプの両方がラインナップされていることがわかります。どちらのタイプにせよ相性の合うPLC入力ユニットに対してしか直接I/O出力できません。
なお、NPNタイプとPNPタイプは出力形態は異なりますが、ケーブルアサインは同じです。茶色被覆の芯線にはプラス24Vを接続し、青色被覆の芯線には0Vを接続します。そして黒色被覆の芯線をPLCの入力端子に接続します。
このような茶色、青色、黒色のケーブルの使用方法はセンサーの型式やメーカーが違えどおおよそ統一されつつあります。興味のある方はIEC60947の規格を調べてみると良いと思います。
NPNオープンコレクタ出力タイプ センサー出力回路例
NPNトランジスタを使用するのがシンクロジックです。
左側の破線で記入されているのがセンサのON/OFF状態を出力する受光器の内部回路を表しています。右側がセンサーの出力を受け取る負荷(リレー)を表しています。負荷(リレー)はセンサーの出力を受けて何かしらの動作を行います。
センサーの出力信号④(黒線)は負荷(リレー)への入力信号となるわけです。
それではこの回路入出力の動作について説明します。
- センサー反応時に、センサ内の接点(NPNトランジスタ)が駆動し、”負荷(リレー)”から”センサー”へと電流(100mA) を引き込む方向に電流が流れます。
- 負荷に電流が流れる。つまり、導通することにより、負荷は動作を行います。(負荷がリレーであれば、接点が動作しますし、負荷がPLCのI/O入力ユニットであれば、シーケンサ内部で対応する入力デバイスの状態が「0」→「1」になる。)
この場合、NPN出力センサーは、シンク動作し、負荷(リレー)はソース動作のような動作をします。
PNP オープンコレクタ出力タイプ センサー出力回路例
PNPトランジスタを使用するのがソースロジックです。
こちらは、PNPタイプのセンサ出力です。
先ほどと同様にセンサーの出力信号④(黒線)は負荷(リレー)への入力信号です。
同様に動作の説明をします。
- センサー反応時に、センサ内の接点(PNPトランジスタ)が駆動し、” センサー “から” 負荷(リレー) ”へと電流を吐き出します(100mA以下)
- 負荷に電流が流れる。つまり、導通することにより、負荷は動作する。(負荷がリレーであれば、接点が動作する。負荷がI/O入力であれば、シーケンサ内部で「0」→「1」になる。)
この場合、PNP出力センサーは、ソース動作し、負荷(リレー)はシンク動作のような動作をします。
オープンコレクタ出力とは
上記の2つのセンサー内部の回路図にはそれぞれトランジスタの図記号が表示されていますが、若干図記号が異なっています。
NPN出力にはNPNトランジスタ、 PNP出力にはPNPトランジスタが使用されています。
そもそも、トランジスタはベース、エミッタ、コレクタの3端子があります。この中のトランジスタのC(コレクタ)端子は、NPNとPNP共に、黒線(出力端子)となっていることがわかります。このコレクタ端子はセンサ内では何も接続されていない、つまり”開放(オープン)”状態であると言えます。このようにコレクタ端子がオープンになっていることから、オープンコレクタ出力と呼ばれます。
入力ユニット
センサーや押しボタンスイッチの出力するデジタルI/O信号をシーケンサに取り込むには入力ユニットを使用します。
入力ユニットには使用電圧タイプがAC(交流)とDC(直流)仕様のものがあります。
入力ユニットのプラスコモンタイプとマイナスコモンタイプ
DC(直流)仕様の入力ユニットはさらにプラスコモンタイプとマイナスコモンタイプに分類されます。プラスコモンとマイナスコモンの切替ができるタイプの入力ユニットも存在します。
まとめると以下のような分類になります。
この中の「コモン」とは共通線という意味です。複数の端子に共通電位を供給するための線です。
また入力ユニットにはほぼ必ずと言っていいほど「COM」端子が用意されています。「COM」端子に接続される電位が入力ユニット内の共通電位となります。
特に「入力ユニット内の共通線」がプラスであればプラスコモンタイプ、マイナスであればマイナスコモンです。(と私は解釈しています。)
MELSEC-Qシリーズ の2機種、QX40とQX80にて説明します。
QX40プラスコモンタイプ入力ユニット
QX40では、各入力の共通線がプラス側に接続されます。
TB1〰TB16の端子に接続される各接点には、入力ユニットから電流が流れ込みます。
これによりそれぞれの端子に対応する入力デバイス信号がONとなり、PLC内で信号変化を検出できるようになる仕組みとなっています。
具体的な配線例は以下のようになります。
- NPNトランジスタを使用するセンサはシンク出力動作する。(センサー反応時に電流が入力ユニット端子のプラスコモン側からセンサー側に流れ込む)
- 従来より、日本国内はNPN出力(ソース出力)するセンサーが普及している。
- プラスコモンのI/O入力ユニットはソース入力動作するので、「ソースタイプ入力ユニット」 と呼ばれる場合がある。
- 上記の配線方法を、シンク出力センサが用いられるので、「シンク入力配線」と呼ばれる場合がある。(特に、MELSEQ系)
- I/O入力ユニット内のフォトカプラのコモンがプラスなので、「プラスコモン」と呼ばれる。(のだろうと思っています。)
QX80マイナスコモンタイプ 入力ユニット
QX80では、各入力の共通線が マイナス側に接続されます。
なお三菱電機の場合入力ユニットと出力ユニットではコモン端子の接続先が異なります。
プラスコモンタイプQX40ではTB17に24Vを接続し、マイナスコモンタイプQX80ではTB18に0Vを接続します。
入力機器と入力ユニットの相性あわせ
- NPNトランジスタ出力タイプ (シンク出力)のセンサーに接続可能な入力ユニットは、 プラスコモンタイプ の入力ユニットになります。
- 日本国内向けではNPタイプセンサーを使用する場合が多いため、入力ユニットQX40を選定します。
- PNPトランジスタ出力タイプ (ソース出力) のセンサーに接続可能な入力ユニットは、マイナスコモンタイプ の入力ユニットになります。
- 海外内向け(特に欧州向け)では、PNPタイプセンサーを使用する場合が多いため、入力ユニットQX80を選定します。
以上です。
入力ユニットだけではなく、出力ユニットにもソース出力タイプとシンク出力タイプといった仕様の違いがあります。理解したうえで部品選定を行う必要があります。詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
また、入出力ユニットには、端子台接続タイプとコネクタ接続タイプがあります。配線方法の違いについては以下の記事を参考にしてみてください。
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