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ハード設計

【シーケンス制御】ボタンひとつで出力をON/OFFするリレー回路

たった一つの押しボタンスイッチで、出力のON/OFF切換えを交互に繰り返したい場合もあるかと思います。ちょうどテレビリモコンの電源ボタンのように、ひとつのボタンでモニタのONとOFFを切り替えることが出来る回路です。

特徴としては、スイッチを1回押すと出力がONになり、スイッチを離しても出力ON状態を保持してくれて、この状態からもう一度スイッチを押すと、出力OFF状態を保持する点です。

このような回路が必要になる場合として、例えば、

  • エアブロー用電磁弁やランプのON/OFF状態を切り換えたい場合
  • コンベアモータの起動/停止状態を切り換える操作ボックスを作る場合
  • コンベアの搬送方向を切り換えたい場合
  • シングルソレノイドをスイッチ一つで制御したい場合

等が考えられます

このように出力信号のON-OFFの状態を切換えて保持する回路を、特にラッチ(Latch)回路と呼びます。出力反転(inversion)回路、オルタネート(Alternate)回路、ラチェット(ratchet)回路などと呼ばれる場合もあります。ボタンを押すたびにON/OFFが変わるので、プッシュオン・プッシュオフ(Push On Push Off )回路と呼ばれる方もおられます。

シーケンサ(PLC)を使用する場合は、PLC内にあらかじめ用意されている命令を使用することで、簡単に実現することが出来ます。三菱電機製シーケンサの場合ビット反転命令「FF」を使用します。KEYENCE製PLCの場合はオルタネート命令「ALT」を使用します。このようにPLCが持っている機能命令を使用することで、スイッチ入力が来るたびに、ビットのON/OFF状態を反転するシーケンス図を簡単に作成することが出来ます。

詳細は以下の記事を参照願います。

一方で、ハード回路による有接点リレーシーケンスによってもこの機能も実現することが可能です。

出力点数1点、入力点数1点程度の非常に小規模な設備(治具)や後付け装置などに適用する際は、シーケンサーを使用するよりも安価に機能実現することが出来ます。このような場合、三菱FXシリーズやSUSのSioコントローラを採用することも検討してもよいかもしれません。

今回はあえて、リレーシーケンスにて実現する方法を解説してみます。

リレーシーケンスによるビット反転回路を作成するためには、リレーのA,B,C接点の動作や自己保持回路などの知識が必要になります。リレーシーケンスを学習するためにも、丁度良い機会になると思います。

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ラッチとは

まず言葉の意味を確認しましょう。

そもそもラッチ(Latch)には「かんぬき」、「掛け金」のような意味があります。

いち度閉めたドアが簡単に開かない方にする為に使用します。

同様に、一度信号がONした後は、それがもとに戻らないように「かんぬき」を掛けて、状態を保持するという意味で、ラッチ回路と呼ばれるのだと思います。

安全上の注意点

リレーシーケンス回路にてラッチ(Latch)回路を作成するとき、最も手っ取り早い方法の一つに、オルタネート仕様の押しボタンスイッチや、トグルスイッチ、セレクタスイッチを使用する方法があります。また、機械式のラチェットリレーを使用する方法もあります。

これらの方法をとる場合、安全上の注意が必要です。

これらの方法には共通して、機械的に接点のON/OFF状態を保持するという特徴があります。スイッチが押下されたという情報を機械的に保持しているため、停電や主電源OFFしても、状態が保持されます。よって、停電等により出力の動力が遮断され一時的にOFFしたとしても、操作信号のON情報は保持されるため、電源再投入後に自動的に出力がONしてしまいます。出力の種類がランプやブザー程度であれば危険性は低いのですが、出力がモータである場合は危険である場合があります。

負荷の種類によっては、主電源OFF時には、出力ON情報もリセットすべきだと思います。

そこで、安全性を考慮し、自己保持回路を応用したリレーシーケンスによる出力反転回路が必要になることがあります。

主電源OFFにより自己保持が解除されるため、停電からの復旧時に出力はOFFになります。

シーケンス回路図

シーケンス回路図(電気回路図)は以下のようになります。CR2の出力がオルタネート出力になります。

リレー回路によるオルタネート出力

プッシュボタンスイッチ押下により、ラッチ出力「CR2」のON/OFFの切換と保持を行います。

上記の回路図ではCR2にC2接点タイプのリレーを使用する場合、1つのC接点が余ります。この接点を自由に使用することが出来ます。CR2と並列に負荷を接続することも可能です。

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必要なリレー

2C接点を持つリレーが必要になります。MY2N-D2リレーなどです。

なお、ラッチ出力となるリレー「CR2」とスイッチの立下りを検出するリレー「CR3」については1C接点のものを使用することも出来ます。

今回は、3つの MY2N-D2リレー を使用して配線してみました。

CR1について

図中に、リレー「CR1」のA接点が1つ、B接点が2つ使用されています。

一見するとリレー「CR1」には接点3つ以上必要となるように思えます。しかし、多くのリレーはA接点やB接点が使用されているのではなく、C接点が使用されています。C接点のコモン部を使用することで、リレー「CR1」は必要な接点数を賄うことが出来ます。

C接点
C接点の図

タイミングチャート

ラッチ出力回路のタイミングチャートは以下のようになります。

ラッチ(Latch)回路のタイミングチャート
ラッチ(Latch)回路

ボタンスイッチを押すことでCR1がONします。

1度目のスイッチONで、CR2がOFF→ONになります。そしてスイッチをOFFにしても出力保持します。

2度目のスイッチONにて、CR2はON→OFFになります。

タイミングチャートは①~④の4つの区分に分けることが出来ます。
それぞれ区間での動作について説明します。

動作説明

ボタンスイッチを押した後(1回目)

図中の赤線が導通部となります。プッシュボタンスイッチを押すことで、プッシュボタンスイッチ自身の接点が閉じ、CR1がONします。

ラッチ(Latch)回路
ラッチ(Latch)回路によるオルタネート出力
ボタンスイッチを押した後(1回目)

CR1

スイッチが押されている間はONします。

CR2

CR1のA接点が閉じ、CR3のB接点が開かないためCR2はONします。

CR3

CR3についてはCR1のB接点が開く(接点が開放する)ため、OFF継続です。

ボタンスイッチを離した後(1回目)

ボタンを押した後は、いずれボタンを離す時が来ます。
(CR2はラッチ出力なので、ボタンを離してもON継続します。)

ラッチ(Latch)回路
ラッチ(Latch)回路によるオルタネート出力
ボタンスイッチを離した後(1回目)

CR1

プッシュボタンスイッチがOFFになることにより、CR1のコイルがOFFします。

CR2

CR2はONしてました。
しかしCR1のb接点が元に戻る(接点導通状態になる)ため、 CR2はON状態を保持し続けます。

CR3

CR1のb接点が元に戻る(接点導通状態になる)ため、OFFからONになります。

ボタンスイッチを押した後(2回目)

もう一度スイッチを押します。
(これにより、先ほどまでONしていたラッチ出力CR2がオフになります。)

ラッチ(Latch)回路
ラッチ(Latch)回路によるオルタネート出力
ボタンスイッチを押した後(2回目)

CR1

プッシュボタンスイッチがOFF→ONになることにより、CR1のコイルがONします。

CR2

CR2はONしてました。
しかし、CR1がONすることによりCR1のb接点は導通しなくなるため、CR2はON→OFFになります
CR3もON継続するため、CR3のB接点は導通しません。はやりCR2はON→OFFです。

CR3

ON継続します。上の図のオレンジ色の破線です。

ボタンスイッチを離した後(2回目)

ラッチ(Latch)回路
ラッチ(Latch)回路によるオルタネート出力

CR1→押しボタンスイッチが開放するため、ON→OFFとなります。

CR2は、プッシュボタンスイッチ操作前からOFFしています。CR1がOFFしたことにより、CR3もOFFになります。

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まとめ

リレーシーケンスによるラッチ回路を解説しました。

  • リレーシーケンスによるラッチ回路を使用することで、電源OFFにより出力や状態保持もリセットすることができます。
  • 汎用性の高い部品を使用するため、すぐに回路を作成することが出来ます。
  • PLCを使用しなくても、ラッチ回路を作成することが出来ます。

以上です

関連

ラッチ回路はラダープログラムでも作成可能です。

以下の記事で、三菱製シーケンサを使用した場合のラッチ回路作成方法について解説しております。参考までにご参照いただけると幸いです。