インバータの多段速制御とは
多段速度制御とはインバータの外部入力端子への信号を切り替えることにより、あらかじめ登録した速度へとインバータの運転速度をスイッチする制御です。
無段階に切り替えるのではなく、予め設定した速度の中からの選択するのがポイントです。
少なければ2通り多くても4通りくらいの速度から一つを選択して使用する場合が多いです。
具体的には以下のような用途があると思います。
- 自動運転時に早い速度で運転し、手動運転時は運転速度を遅くする場合
- 正転(ワーク搬送時)と逆転(復帰時)で速度変更したい場合
- 通常搬送時は減速時だけ低速に切り替える時
- 機種設定によって移動速度を変化させる場合(重量ワーク搬送時は移動速度を遅くする)
当初は正転逆転のみの使用予定だったが、停止精度が悪いため、減速用のドグを追加して、減速させてから停止する用に改造するようなパターンはよくあるかと思います。
インバータの製造メーカには、安川電機、三菱電機、富士電機などいくつかありますが、どのメーカーの低価格インバータであっても速度切り替えを行うことができます。
今回は三菱電機製 FREQROL-F700 シリーズを使用して、速度切替を行う方法を説明します。
詳細については、インバータのユーザマニュアル中の「多段速設定による運転」を参照願います。
パラメータの設定
初期設定では以下のような速度設定になっています。
速度設定 | 周波数(初期設定) | パラメータ番号 |
高速 RH | 60Hz | Pr.4 |
中速 RM | 30Hz | Pr.5 |
低速 RL | 10Hz | Pr.6 |
「 低速 RL 」「 中速 RM 」 「 高速 RH 」 のうち、複数の信号が同時にONすると、低速側の周波数設定が有効になります。
配線について
インバータの速度設定は、入力信号用の端子を使用して切り替えます。
制御端子左側に、速度切替を行うための 「 低速 RL 」「 中速 RM 」 「 高速 RH 」 端子が用意されています。 「 中速 RM 」 「 高速 RH 」 については少し読みにくいので注意が必要です。一番左にある端子はFM端子です。
最も左にあるFM端子は、アナログメータなどに、インバータの出力周波数や、電流値を表示するためのパルス出力端子(FM端子)です。パアラメータPr.54にてモニタ内容を変更することが出来ます。
多段速度運転を使用する際に特に配線する必要はありません。
RUN点滅について
初期設定の場合、インバータの電源をONすると,EXT(外部運転モード)になっています。この状態で、「正転始動 STF」か「逆転始動 STR 」 信号をインバータに入力することで、インバータは運転を開始します。
多段速運転を行う際は、必ず、始動指令以外に、 「 低速 RL 」「 中速 RM 」 「 高速 RH 」 のいずれか一つも指令する必要があります。
また、すべてOFFの場合は運転を行うことが出来ません。
インバータ正面PUパネル上の「RUN」ランプが点滅します。
関連記事
「正転始動 STF」端子か「逆転始動 STR」端子 等のインバータへの制御命令を伝えるための信号をインバータの入力信号用と呼びます。入力信号については、以下の記事にて解説しています。
入力信号を使用する際、入力信号の伝え方にはいくつかの種類があります。
スイッチやリレーなどの接点入力信号を使用する場合は難しくはないのですが、
PLCの出力信号にてインバータへ直接信号入力する場合は、注意が必要です。PLC出力ユニットがシンク出力、ソース出力なのかによって、インバータ側の設定変更を行う必要があります。
以下の記事にて解説しています。
運転について
多段速指令を使用してインバータを起動させる場合は、必ず、
- 回転方向を指定するための「正転始動 STF」端子か「逆転始動 STR」端子
- 回転速度 を指定するための 「 低速 RL 」「 中速 RM 」 「 高速 RH 」
の両方をONさせる必要があります。
まとめ
- 多段速指令 を行うために必要な配線設定とパラメータ設定について説明しました。
- インバータを使用する機会は多いのですが、特に多段速指令を使用する機会が多いです。
非常に簡単に使用できるため、使い方を覚えておくとよいかもしれません。
以上です。
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