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ハード設計

インバータの外部信号運転と制御回路

インバータの外部入出力端子を使用したインバータの制御方法について解説してみたいと思います。

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インバータとは

インバータとは誘導モーターの起動/停止を行うための電気部品であり、以下のような様々な機能を持っています。

  • モーターの回転方向を正転逆転で切り替える。
  • 外部信号により自動的にモーターの運転を行う 。
  • 回転速度を調整する。
  • モータの保護機能を行う
  • モーターに供給する電流電圧のモニタする。

書き出すときりがないので、この辺にしておきます。

インバータの操作について

インバータを手動操作する場合は、本体正面に取り付けられたパネルやボタンを使用します。

一方でFA装置に組み込んで使用する場合、インバータの外部入力端子機能やネットワーク通信機能を使用して、PLCがインバータを制御し、運転を行う場合がほとんどです。

PLCがインバータを制御するためにはいくつかの方法があるのですが、中でも最も簡単で安価な方法はインバータの外部入力端子を使用する方法です。

一番手軽に使用でき、使用機会が多いため解説してみます。

インバータ

インバータとして、低価格・シンプルタイプのインバータを例に説明します。

具体的には以下の通りです。

メーカ シリーズ名
三菱電機FR-E700
FR-D700
安川電機J1000
V1000
富士電機FRENIC-Mini
東芝TOSVERT VF-nC3

三菱電機製のFREQROL-E700シリーズインバータを例にして説明します

商品紹介は以下の通りです。

また、三菱電機FAサイトにて会員登録を行うと詳細な取扱説明書のダウンロードが可能になります。
インバータの取扱説明書は応用編で300ページ越、基礎編でも60ページほどあります。

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インバータの運転モード

インバータには、誤操作防止のために、いくつかの運転モードが用意されています。

PU運転モード時は、インバータ正面の操作パネルからの運転を行うことが出来ます。

PU運転モードに近いモードに、JOG運転モードがあります。JOG運転モード中は操作パネルRUNボタンオン中にだけ、インバータを起動することが出来ます。

EXT(外部運転モード)時には、外部からの制御端子にて運転を行います。

インバータ工場出荷時の設定では電源ON時にEXTモードになっているはずです。

インバータを外部起動する場合に変更したほうが良いパラメータ

インバータをFA装置内に組み込んで使用する場合は、インバータの運転モードに制限を掛けておいた方が良い場合があります。

インバータに電源が入っている状態で、うっかり操作パネルを触ってしまった際などの誤操作を防止するためのパラメータが用意されているはずです。

取扱説明書のパラメータ一覧から探してパラメータ変更しておきましょう。

注意

三菱電機製 FREQROL-E700シリーズ インバータの場合、パラメータ番号79です。(Pr.79)

  • (Pr.79) 運転モード選択
  • 初期設定は、「0」→インバータの(PU/EXT)ボタンで運転モード切替可能です。
  • 変更後は、「2」→外部運転モード固定にします。

これにより、操作パネルからPU運転(操作パネルおよびパラメータユニット運転)モードへの切替が出来なくなり、操作パネルの操作ミスなどによる、意図しないインバータの起動を防ぐことができます。

インバータ制御入力

外部(PLC等)からインバータに対し起動要求を行う場合に使用する端子を、インバータの「制御入力端子」と呼びます。

FR-E720の場合、割付可能な信号の数は7点です。それぞれに制御入力信号の意味を表す記号が割り付けられています。パラメータによって割り付ける信号を切り換えることも可能です。

インバータ工場出荷時の初期設定は以下の通りです。

端子記号名称内容
STF正転始動信号ONで正転
STR 逆転始動信号ONで逆転
RH 多段速度選択速度切替
RM 多段速度選択 速度切替
RL 多段速度選択 速度切替
MRS*出力停止インバータ出力遮断
RESリセットアラームリセット

正転逆転の切替と、速度切替を行うような簡単な用途であれば、初期設定から変更する必要はありません。

なお。インバータ正面のカバーを取り外すことで、内部にある信号用の端子台にアクセスすることが出来るようになります。端子に信号線を接続する際は、特に圧着端子なしでそのまま配線することも可能です。スプリング端子用台などに使用するフェルール端子(ヨーロピアン端子)を使うのが良いでしょう。

三菱FAインバータ制御入出力端子
FREQROL-E700シリーズインバータ

「STF」「STR」始動信号の動作選択について

STF信号と、STR信号は、以下のような動作を行います。
STFが正転起動信号で、STRが逆転起動信号です。STF信号がON中のみ正転動作を行います。

STFSTRインバータ動作
ONON減速停止
ON OFF 正転
OFF ON 逆転
OFF OFF 減速停止

STFとSTRの2本の信号線を使用して、運転を行うことから2ワイヤ式と呼ばれる運転方法です。
インバータの初期設定は、2ワイヤ方式となっております。

多段速度運転機能

多段速度運転とは、入力端子への制御入力の組み合わせによって、インバータの出力周波数を切り換える機能です。出力周波数についてはあらかじめパラメータ設定しておく必要があります。

初期設定では以下のような速度設定になっています。

速度設定周波数(初期設定)パラメータ番号
高速 RH 60Hz Pr.4
中速 RM 30Hz Pr.5
低速 RL 10Hz Pr.6

「 高速 RH 」「 中速 RM 」「 低速 RL 」のうち、複数の信号が同時にONすると、低速側の周波数設定が有効になります。

インバータの多段速指令の使用方法については、以下の記事を参考にしてください。

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インバータ出力遮断信号(MRS信号)

MRS端子をインバータのインターロック信号として使用する場合が多いです。MRS信号がONになっているときは、インバータに始動信号を与えても、インバータは出力が遮断されるため運転できません。

例えば、機械の運転準備完了信号(インバータ運転許可)や非常停止信号をインバータMRS端子に接続するとよいでしょう。非常停止スイッチ押下により機械側の運転準備がOFFになった時に、インバータ側も出力遮断することができるようになります。

MRS信号のフェールセーフを考慮した使い方

MRS信号を使用する際はフェールセーフを考慮し、機械側準備完了信号線が断線した時にはMRS信号ONとみなしインバータを運転禁止とした方が良いでしょう。

よって、MRS端子に機械側の運転準備完了信号を接続する際にはA接点を使用し、運転準備完了信号が”開(OPEN)”の時に、MRS信号ONとみなしインバータを停止させ、運転準備完了信号が”閉(CLOSE)”の時に、MRS信号OFFとみなしてインバータ運転可能とします。つまりMRS端子側を負論理へと論理反転させる必要があります。

これには、インバータ側のMRS入力選択用のパラメータ を変更する必要があります。

  • このパラメータの名称はMRS入力選択で、パラメータの番号はPr.17です。
  • 初期設定は「Pr.17=0」 常時開入力です。
  • 変更後は「Pr.17=2」  常時閉入力(B接点入力仕様)です。

常時閉入力(B接点入力仕様) の意味は分かりにくく、補足説明必要だと思います。

「常時」とは、平常時即ち”運転可能な状態”の時であり、「閉入力」とは接点が閉じている(導通)状態という意味です。つまり運転可能な状態ではMRS接点が閉じていることになります。
よって、MRS端子の導通時と開放時を図に表すと、以下のようになります。

三菱 インバータ MRS入力選択pr17=2 常時閉入力
三菱 インバータ MRS 常時閉入力

インターロック用の信号として、インバータのMRS端子に機械の運転準備完了信号を”A”接点にて入力し、MRS入力選択Pr.17=2常時閉入力(B接点入力仕様)としています。

運転準備完了信号の接点が開いているときは、機械の運転が禁止されている状態です。よって、MRS端子が開(開放)になっているため、MRS信号ONとなり、インバータの出力は遮断されます。

なお、外部運転しない場合(MRS端子に配線をしない場合)は、MRSパラメータ Pr.17 =0にしておかないと、インバータは起動できないので注意してください。(初期設定では Pr.17 =0 です。)

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インバータ制御出力

インバータの状態を上位のPLCに通知するための信号がインバータの出力端子に割り付けられています。こちらも初期設定から変更することはまれです。

端子記号出力携帯初期設定
RUNオープンコレクタ出力RUN
インバータ運転中
FU オープンコレクタ出力 FU
出力周波数検出
ABCリレー出力ALM
異常出力

インバータ制御出力信号中のABC端子の配線について

PLC等を使用してインバータを外部運転する際、インバータに異常が発生しているかいないかを監視するためにABC端子を使用します。

Aとは、インバータのリレー出力のA接点出力端子であり、BはB接点出力端子です。CはCOM端子になります。

初期設定ではインバータがアラーム停止した時(ALM時)にリレーが動作するように端子機能が割り付けられています。インバータに異常が発生していない平時では接点C-B間は導通であり、異常発生時に接点C-B間が非導通になります。

まとめ

  • インバータ本体にある制御端子機能を使用することで、簡単にリモート起動が可能です。
  • インバータにはRS-485通信やCC-LINKといった高価なオプションを使用しても速度変更などが出来ますが、本当にこれらが必要かどうか吟味必要です。
  • 多段速度指令端子を使用することで、気軽に速度切替することが出来ます。

以上です。

以上が、インバータを外部運転する際に使用する制御信号です。具体的な配線についは次の記事を参考にしてください。