ブレーカやサーキットプロテクタを制御盤に実装するには、大きく分けて2つの方法があります。
1つはDINレール、もう1つは中板に電気機器を直接ボルトで固定する方法です。
出来る限り、DINレールを使用しておいた方が良いとは思います。しかし、特にブレーカ、中でもメインブレーカに外部操作ハンドルを取り付けて使用する場合には、 取説上 DINレール取付不可となっている場合もあるため、取付ネジを使用して直接ブレーカを中板に固定します。
この時使用されるネジは、特殊なネジが使用されているため、紛失しないように注意が必要です。ブレーカの機種にもよりますが、専用の取り付けネジが電気機器本体に付属されていることが多いです。
ネジの頭は通常のなべネジなのですが、M4などの呼びサイズのわりに長さが長いネジが使用されている場合があります。また、ネジにあらかじめ座金が組み込まれている点も特徴的です。このようなネジを「座金組込み十字穴付きなべ小ねじ 」 と呼びます。セムスネジと呼ばれる場合もあります。
座金の必要性
部品を取り付ける際は、ネジ単体で使用するのではなく、座金を組み合わせて使用する場合が多いです。座金とはワッシャーの事です。座金には、ばね座金( プリングワッシャー )と平座金( 平ワッシャー )などの種類があります。
ばね座金を使用する目的については、諸説ありそうですが、一般的にはゆるゆるみ止めのために使用しているとされていることが多そうです。
平座金を使用する目的は被締結物である電気機器本体を、ばね座金のエッジの部分で気づ付けることを防ぐためとされています。特に、電気機器のハウジングは樹脂製の場合もあります。ばね座金を直接あてた時に、ばねの部分で電気部品本体を傷つけてしまうことを防ぐために平ワッシャーが使用されます。
また、平ワッシャーを使用し、ねじと電気部品の接触面積を大きくすることで、ネジ自体締結時の力を分散させ、樹脂が割れたり陥没することを防ぐ効果もあると思います。
電気部品を取り付ける際にに取り付ける際には、 ネジ本体にスプリングワッシャーと平ワッシャーが組み込まれた座金組み込みネジを使用する場合が多いです。
座金組込ネジ
このネジは製造過程の途中で座金を組み込んでしまうため、座金が落下しない構造になっているという特徴があります。座金組み込みネジを使用するメリットをまとめると以下のようになります。
作業スピードアップ
自分でスプリングワッシャーや平ワッシャーを組み込む作業が不要になるため、作業効率が良です。使用本数が多いと、一つ一つワッシャ類をセットするの手間を感じますが、座金組込ネジを使用することで、そういった手間を省くことが出来ます。袋や箱からボルトを取り出してから、すぐに使用することが出来ます。また、ボルト、スプリングワッシャー、平ワッシャーの3点セットが1つになっているため、保管や持ち運びの手間も少なくなります。
ミス防止
予め座金が正しく、組み込まれているため、「入れ忘れ」や「入れ違い」の心配もありません。ボルトラックの中ではワッシャーが2枚くっついてしまっていたりすることが稀にありますが、予め組み込まれていれば、誤って2枚入れてしまう心配もありません。
初心者・新人の方に作業をお願いするときなどでも、入れ間違いの心配はなくなります。
座金の紛失防止
一番のメリットは座金の紛失防止だと思います。メンテナンスや部品交換時などに、うっかりボルトを落としてしまっても、ワッシャーなどが外れないため、どこかへ転がったり、なくしたりすることを防ぐことが出来ます。
座金組み込みネジにはいくつもの種類がある。
実はJIS規格上ワッシャーに大小2種類が存在します。さらにISO規格のワッシャーも存在します。
(新JIS規格(ISO規格)と旧JIS規格があるようです)
ばね座金組み込みネジに
通称 | 構造 | |
P3 | スプリングワッシャー1枚 +JIS平ワッシャー | |
P4 | スプリングワッシャー1枚 +JIS小形平ワッシャー | |
I3 | スプリングワッシャー1枚 +ISO平ワッシャー | |
I4 | スプリングワッシャー1枚 +ISO平ワッシャー |
元々P3は、セムスネジ、ばね座金、平座金の3つのピースを組み合わせたものという意意味で、P3と呼ばれ、後から3以外の数字ということでP4と呼ばれているそうでした。P4は4つの部品ではなく3点の部品からできています。
またP3,P4を元に、ISOワッシャーが使用されるという意味で、I3,I4という呼ばれるようになったそうです。
三菱電機製のブレーカには、取り付け用に小ワッシャーの座金組込ネジが付属されている。
三菱電機製の場合、ブレーカ本体を板金に取り付ける際は、小ワッシャーの座金組み込みネジを使用するようにと取説に記載されています。(もしくは、小ワッシャーとばね座金を自分で組み合わせて使用する)

付録の項目の、備考欄の下の注意書きの部分に、確かに記載があります。

ブレーカの外形寸法からはわかりにくいのですが、ブレーカ取付ネジ( M4 )の周囲にはザグリの部分があります。この時のザグリ径は約9mmほどであるため、通常サイズのM4ワッシャーはザグリ部分に収まらないようになっています。


そこで、外形8程度の小ワッシャーを使用しているという理屈だと思います。
まとめ
- ブレーカの取り付け用のボルトは、ブレーカ本体に付属している場合が多い。少し特殊なネジであるため紛失には注意する。
- インバータやサーボアンプには、取り付け用のねじが付属していない場合が多い。めったに取り外すものではないが、座金組み込みネジを使用するほうが作業性が良いためおススメします。
- 座金組み込みネジには使用するワッシャーサイズに違いがある。通常の丸ワッシャーを使用するものをP3ネジ、小ワッシャーを使用するものをP4ネジと呼びます。
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