FX3シリーズにラインナップされているシーケンサの種類は非常に膨大です。この種類の多さゆえに、慣れないうちは選定に困ることがよくあると思います。型式を把握することすら一苦労するほどです。
しかし、低価格でコンパクトなシーケンサが求められるケースは多いです。最適なFXCPUを選定するためにまずは、大まかにラインナップを把握しておく必要があると思います。
なお、FX1やFX2シリーズシーケンサはすでに生産中止しております。
FX3シリーズCPUのラインナップについて
まずはユーザーズマニュアルよりもカタログから参照するとよいと思います。
FXシリーズシーケンサ総合カタログ は以下の三菱FAサイトからダウンロードすることができます。
電気設計時には、回路図や制御盤の設計を行うために、ユーザーズマニュアルのハードウェア編から確認したくなるでしょう。しかし、FX3シリーズの場合、2020年春時点で2日の5種類のハードウェアマニュアルが存在します。どれも、数百ページのボリュームがあります。読み込むのは大変です。
- FX3Sシリーズ ユーザーズマニュアル[ハードウェア編]
- FX3Gシリーズ ユーザーズマニュアル[ハードウェア編]
- FX3Uシリーズ ユーザーズマニュアル[ハードウェア編]
- FX3GCシリーズ ユーザーズマニュアル[ハードウェア編]
- FX3UCシリーズ ユーザーズマニュアル[ハードウェア編]
ほぼ同じような内容ですので、ハードウェアマニュアルから5機種分の特徴を掴むことは難しいかもしれません。いきなりマニュアルからではなく、まずはカタログから機種ごとの大まかな特徴を把握するほうがよいと思います。
FX3S・FX3G・FX3Uの3大ラインナップについて
MELSEC-Fシリーズには、FX3S・FX3G・FX3Uの3モデルがラインナップされています。
FX3GとFX3Uには、末尾にCが付く機種が存在しますが、ベーシックモデルFX3SにはC付きの機種が存在しません。Cが付くタイプは入出力信号の接続仕様がコネクタ仕様になっています。Cのつかないタイプはネジ端子でCPU基本ユニットに直接配線できるようになっています。
このモデルごとに、基本ユニットの入出力点数・電源のAC/DC仕様・入出力のリレー/ソース/シンクといった細かな仕様を選択できるようになっています。
各モデルの違いは、最大I/O点数だけではなりません。モデルによって特殊ユニットの接続可否・処理速度等の違いがあります。
機種 | モデル | プログラム容量 | 最大 入出力点数 | I/O配線 | 接続ポート | |
FX3S | ベーシック | 4kステップ | 30点 | ネジ端子台 接続 | USB type-B RS422 Mini-DIN8pin | |
FX3G | スタンダート | 32kステップ | 128点 | ネジ端子台 接続 | USB type-B RS422 Mini-DIN8pin | |
FX3GC | スタンダート | 32kステップ | 128点 | コネクタ 接続 | USB type-B RS422 Mini-DIN8pin | |
FX3U | 高機能 | 64kステップ | 256点 | ネジ端子台 接続 | RS422 Mini-DIN8pin | |
FX3UC | 高機能 | 64kステップ | 256点 | コネクタ 接続 | RS422 Mini-DIN8pin |
- FX3Sシリーズにはコネクタ接続タイプが存在しておりません。
- FX3SシリーズにはI/O増設ブロックを取り付けることができません。
- おそらくFX3Uシリーズが最も古いタイプです。後発のFS3SやFS3Gには、ユニバーサルモデルQシリーズCPUやGOTにも使用されるMini USB type-Bの通信ポートが搭載されていません。
- FX3S,FX3GにはノートPC接続用にMini USB type-Bの通信ポートが搭載されています。
ソース・シンク・リレー出力
FXCPUの場合、入力信号はソース/シンク共通です。しかし、PLCの出力信号仕様には、ソース・シンク・リレータイプの3種類が存在します。
ソース・シンクロジックについては、以下の記事が参考になると思います。
また、FXシーケンサのうちAC電源仕様のタイプには、サービス電源が搭載されております。サービス電源とはシーケンサ側内蔵されている24V電源です。センサーや押し釦スイッチなどの入力機器とソレノイド・ランプなどの出力機器用の電源をシーケンサ側から供給することが可能です。ただし、容量は400mA(0.4A)となっています。あまり大きい容量ではないため取り扱いには注意しましょう。
AC電源・DC電源
シーケンサを動作させるための電源を日本ユニットへ供給する必要があります。MELSEC-Fシリーズシーケンサの一部の機種(主にネジ端子接続タイプ)には、供給電源がAC電源仕様とDC電源仕様品の2種類がラインナップされています。
例えば、FX3S,FX3G,FX3Uの各シーズの最小構成シリーズでは以下のような感じになっております。定価を比較するとAC電源シリーズのほうがやや高い傾向にあります。おそらくサービス電源機能が付いているからでしょうか。
FX3Sシーケンサ | 電源仕様 | 出力ロジック | 定価 |
FX3S-10MT/ES | AC電源仕様 | シンク出力 | ¥22,000 |
FX3S-10MT/DS | DC電源仕様 | シンク出力 | ¥20,000 |
FX3G-14MT/ES | AC電源仕様 | シンク出力 | ¥34,000 |
FX3G-14MT/DS | DC電源仕様 | シンク出力 | ¥32,000 |
FX3U-16MT/ES | AC電源仕様 | シンク出力 | ¥54,000 |
FX3U-16MT/DS | DC電源仕様 | シンク出力 | ¥54,000 |
FX3S・FX3G・FX3Uの違い
いったんFX3S・FX3G・FX3Uの各モデルの特徴をまとめてみます。
FX3S
FX3Sは、最も安価でコンパクトなシーケンサです。おそらくFX3シリーズの中で最も後から発売されたモデルではないかと思われます。
ハードウェアマニュアルの初版作成日がFX3Sは、2013年,FX3Gは2008年,FX3Uは2005年となっておりました・
プログラム容量は4,000ステップとFXCPUの中でも最も小容量です。簡単な装置程度であれば十分かと思われます。
なお、FS3Sシリーズを選定する際の注意点は、以下の通りです。
- 増設ユニット(入出力I/Oユニット)を追加することができません。
- 特殊ユニット(CC-Link V2対応マスタブロック等)を追加することができません。
ただし、機能拡張ボードを搭載することで、少量であれば入出力を増やすことができます。FX3G-4EX-BDであれば入力点数を4点追加することができるようになります。
FX3G
FX3シリーズの最上位モデルがFX3Uシリーズですが、FX3GはFX3Uよりも後に発売されたCPUユニットです。
FX3Uのプログラム容量が、64,000ステップに対し、FX3Gのプログラム容量は32,000ステップです。
FX3U
FX3シリーズの最上位モデルがFX3Uシリーズです。
- 位置決めブロックユニット(FX3U-20SSC-H)を唯一使用可能なFXCPUです。
- 最上位モデルではありますが、CPU基本ユニット本体には、PC接続用のUSB typ-Bコネクタが取り付けられていません。
ただし、FX3U-20SSC-Hを基本ユニット(CPU本体)に取り付ける際、FX3Uであればそのまま取り付けることができますが、FX3UC(コネクタ接続仕様タイプ)を使用する場合は、コネクタ変換アダプタ(FX 2NC-CNV-IF)が必要になりますので注意しましょう。また、三菱サーボMR-J4- B タイプは SSCNET Ⅲ /H 対応 のAC サーボです。FX3U-20SSC-Hが対応しているのはSSCNET Ⅲです。(/Hが付きません。) MR-J4サーボを使用したい場合はJ3 互換モードに設定してから使用する必要があります。
さらに、FX3U-20SSC-Hを使用するためには、パラメータ設定・モニタ/テスト用ソフトウェアFX Configurator-FPが別途必要になります。
シーケンス技能検定
参考までにシーケンス技能検定を受験する際に、自前で用意すべきPLCのスペックについて解説します。シーケンス技能検定1級・2級の実技試験で会場に持ち込むシーケンサは、入力16点以上。出力14点以上です。このスペックに該当する最小のI/O点数のネジ端子仕様品は、以下の機種です。
型式 | 入力点数 | 出力点数 | |
FX3S | FX3S-30MR/ES | 16点 | 14点 |
FX3G | FX3G-40MT/ES | 24点 | 16点 |
FX3U | FX3U-32MT/ES | 16点 | 16点 |
また、試験の際に使用できる電源はAC100Vです。AC電源タイプの場合電圧範囲がAC100V〰240Vですので、AC電源タイプでよいのではないでしょうか?
また、シーケンス技能検定では、以下の三菱エンジニアリング製のような検定盤を使用して試験を行います。
ランプなどの出力部品について、検定盤側の配線を確認すると、シーケンサ側の出力信号仕様は、出力電圧DC24Vで オープンコレクタ式(シンクタイプ)が良いと思われます。もしくはリレー出力タイプでもよいと思われます。