三菱インバータ(計算機リンク)プロトコルを使用することにより、FXCPUのオプションボードと市販のEthernetケーブルにて、インバータの運転やパラメータ変更を行うことができます。
FA設備全体に求められる機能と比較すると、インバータの速度調整や運転の起動/停止に関係する部分などはほんの一部に過ぎないと思います。インバータ通信機能の仕様調査や設計資料集めにかける時間を少しでも節約して、本来の設計に割く時間を増やせるように資料をまとめたいと思います。
前回はFXCPU側に必要なオプションボードや配線、分配器などについてまとめてみました。
今回はパラメータ設定とプログラミングについてまとめてみます。
今回も、上記の記事と同様に、三菱電機製シーケンサFX3GシリーズとインバータFREQROL-E700シリーズを「RS-485インバータ通信制御機能」を使用してリモート運転させる方法について解説します。
FREQROL-E700パラメータ設定
RS-485インバータ通信制御機能を使用するためには、FREQROL-E700シリーズインバータ側のパラメータの変更を行う必要があります。最低限変更する必要のあるパラメータは以下の通りです。
パラメータ | パラメータ名称 | 設定値 | インバータ 初期設定 |
Pr79 | 運転モード選択 | 2 | 0 |
Pr117 | PU通信局番 | 1 | 0 |
Pr118 | PU通信速度 | → | 192 |
Pr119 | PU通信ストップビット長 | 10 | 1 |
Pr120 | PU通信パリティチェック | 2 | 2 |
Pr121 | PU通信リトライ回数 | → | 1 |
Pr122 | PU通信チェック時間 | → | 0 |
Pr123 | PU通信待ち時間設定 | 9999 | 9999 |
Pr124 | PU通信CR/LF選択 | 1 | 1 |
Pr340 | 通信立上りモード選択 | 10 | 0 |
Pr502 | 通信異常時停止モード選択 | 2 | 0 |
Pr549 | プロトコル選択 | 0 | 0 |
各パラメータの詳細については、三菱汎用インバータFREQROL-E700 取扱説明書(応用編)の「4.20 通信運転と設定」に記載があります。
複数台のインバータを設定する場合の注意事項として、「Pr117 PU通信局番」については重複の無いように設定する必要があります。
例えば、インバータを2台シーケンサに接続させる場合、1台目はPr117=0 2台目はPr117=1 といった感じです。
通信関連のパラメータを変更したあとは、必ずインバータの電源をOFF→ONしてリセット操作を行う必要があります。リセットを行わないと設定内容が反映されない恐れがあります。
FXCPU側パラメータ設定
続いて、FXCPU側のパラメータ設定について説明します。
なお、FXCPU側の設定の詳細は、以下の取扱説明書を参照願います。
本記事では最低限必要な項目と概略だけを説明いたします。
「FXシリーズマイクロシーケンサ ユーザマニュアル 通信制御編(FX-U-COMMU-J)」→「6.FXシーケンサ通信設定」
(ページ番号:E-65です。)
FXCPU側の通信設定については、GX Works2を使用します。
以下の操作を行い、通信パラメータの設定画面を表示させます。
ナビゲーションウィンドウ→PCパラメータ設定→PCシステム設定(2)
- 1内蔵RS485ポートチャンネル
FXCPU側の内蔵RS485ポートの通信チャンネルはCH1としています。
インバータ通信制御用の機能命令「IVDR」などを使用する際に、使用チャンネルを指定する必要があります。 - 2データ長&ストップビット長
インバータ側の設定値に合わせて設定しています。
インバータ側のパラメータ「Pr119 PU通信ストップビット長」=10 の時、
データ長7bit、ストップビット長1bitとなります。FXCPU側の設定もこの内容に合わせて設定します。
- 3パリティー
インバータ側の設定値に合わせて設定しています。
Pr120.PU通信パリティチェック 偶数パリティあり - 4伝送速度
インバータ側の初期設定値に合わせて設定しています。
特にこだわる必要はないかと思います。
Pr118.PU通信速度 192kbps - 5ヘッダ、ターミネータ、H/Wタイプ、局番設定、タイムアウト判定
ユーザマニュアルによると、無視してOKだそうです。
制御伝送手順については、インバータ側の設定値に合わせて設定しています。
FXシーケンサのプログラミング
インバータ制御のためには、インバータ通信機能用の応用命令を使用する必要があります。
こちらについても、詳細は、シーケンサのユーザマニュアル通信制御編の取扱説明書を参照願います。
ユーザマニュアルには、サンプルプログラムも記載されています。
「FXシリーズマイクロシーケンサ ユーザマニュアル 通信制御編(FX-U-COMMU-J)」→「9.プログラム作成(FX3S, FX3G, FX3GC, FX3U, FX3UC)」
(ページ番号:E-88です。)
インバータの運転周波数の変更と起動/停止程度の用途であれば、以下の3点の応用命令を使用すれば十分かと思います。
機能 | 応用命令 |
IVCK | インバータの運転監視 |
IVDR | インバータの運転制御 |
IVWR | インバータのパラメータ書込み |
それぞれ、簡単に説明してみたいと思います。
IVDR/ インバータの運転制御
IVDRは、インバータの運転に必要な制御値をシーケンサからインバータに書込みする命令です。
インバータの正転/逆転を行う際などに使用します。
例として作成した応用命令の「K2M100」部が「インバータへの書き込み値」となっています。
2*4=8点分のビットデータを転送します。
上記の例では、インバータへの命令信号の割り付けは以下のようになっています。
M100 | AU(電流入力選択) |
M101 | 正転指令 |
M102 | 逆転指令 |
M103 | RL(低速指令) |
M104 | RM(中速指令) |
M105 | RH(高速指令) |
M106 | RT(第2機能選択) |
M107 | MRS(出力停止) |
上記割り付けについては、三菱汎用インバータFREQROL-E700 取扱説明書(応用編)の「4.20.5 三菱インバータプロトコル(計算機リンク通信)について」を参照願います。
インバータへの書き込み値として、「K2M100」のようにビットデバイスを桁指定しています。
ビットデバイスの桁指定については、以下の記事にて解説しています。
IVDR/ インバータの運転制御
IVDR等のインバータ通信命令を使用する際には、以下のような注意事項があります。
なお、M8029はインバータ通信命令の実行完了フラグです。
インバータ通信制御に使用する特殊デバイス
インバータ通信機能を使用するためには、FXCPU側の特殊レジスタを使用する必要があります。
(下記)
まとめ
RS-485インバータ通信制御機能についてまとめてみました。
インバータのパラメータ設定、シーケンサ側のパラメータ設定が必要になります。
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FXCPU側に必要なオプションボードや配線、分配器などについてまとめています。
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